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何だか馬鹿馬鹿しい言い合いをしながら、結局セイカの家に行くという決定は覆らなかった。 ピンポン、とチャイムを鳴らすと 「あいよどちら様?」 と気だるげなセイカが出てきた。 作業着の前を開けて、前に会った時には綺麗にアップされていた髪も後ろにぴちっと纏めてある。 いかにも職人という感じだ。 セイカは食材を抱えた二人に怪訝な視線を向けた。 「で、ナニしに来たんだい?」 「セイカさん、焼き肉にお餅って入れる!?」 掴み掛からんばかりの勢いで問うセイラにぐぐっと気圧されながら。 「入れない」 と切り捨てた。 「ほら見ろ」 「スキ焼という料理に入れるのは見た事あるぞ。弓月の方が詳しい・・・訳ないな。あれも肉を使うし」 「うるせえよ」 「で、お二人さん、そんな事を聞きに来たのかィ?」 「いえ、聞きに来ただけじゃなくて、ご一緒しようかと思いまして」 「それから、銃の進み具合は?」 よくぞ聞いてくれました、とセイカはにたあっと笑った。 「さっき完成したところだよ」 するとセイラは手を叩いて喜び、それから誇らしげに弓月に向き直った。 「来て良かったでしょ?」 「そうだな。それよりセイカ、銃。」 「それよりって何よ。」 セイラは拗ねたように頬を膨らませて弓月の服の袖を引っ張った。 弓月は困ったように眉を顰める。 そんな二人の様子を見て、セイカは可笑しそうに目を細めた。 「銃も大切だけど、先にご飯にしましょう。」 「先に食べていてくれ。俺は先に銃を見る。」 「・・・。そんな事言ったらお肉が無くなるわ。弓月はお肉、食べたくないの?」 「う――。お前だってそんなに肉ばっかり食べたら太るぞ。」 「ひっどおぃ!それが女の子に対して言う言葉!?」 「弓月、そうだよ。女性に対して体重と年齢の事は禁句だ。」 そう言うとセイカはセイラの手を引いて、弓月に手招きした。 「銃は食べながらでも見えるだろ?それより飯だ。私も銃のお蔭でまともに食べてないんだよ。」 「だからってなぁ。」 弓月は疲れたように溜息を吐く。 セイラとセイカは訳が分からないとでも言うように顔を見合わせて首を傾げた。 「どうして仕事場でするんだ。」 「こっちの方が雰囲気あって盛り上がるだろう?」 「それに火力が強いから直ぐ焼けるじゃない?」 「これでも十分抑えてるんだけどね。」 セイラは次々と網の上に焼肉を置いた。 ついでに餅も。 そして餅が焼けると、自分ではなく弓月の皿に盛る。 すると弓月は少しだけ嫌そうな顔をした。 「それよりも銃は?」 「そう焦るな。」 セイカは肉を頬張りながら言う。 「焦っても逃げるもんじゃないし。」 「その言葉はそっくりそのまま返す。」 そう言うセイカも一心不乱に肉を食べていたのに。 弓月みたいに肉なんてあまり食べれない訳では無いだろうに。 セイカは弓月の言葉を受け、眉を顰めて皿を置く。 「肉は逃げる。」 「そうよ弓月。貴方も食べなさい。」 セイラは焼けた肉を弓月の皿に置く。 「しっかり食べて試合に備えないと。」 セイラとセイカが焼ける傍から弓月の皿に置いていくので、あっという間に弓月の皿には、肉・肉・肉・肉・野菜のアンバランスな山が築かれた。 「おい、乗せ過ぎ」 「戦士なら食べておける時に食べられるだけ食べろって、お母さんに教わらなかったのかい?」 「沢山食いたくても胃が小さいんだよ!今までまともな食事してないからっ」 「そのうち広がるわよ。はい、ご飯ご飯」 平皿にご飯も山盛りで盛られ、どんと弓月の前に置かれた。 「俺を食べ過ぎで殺す気かッ」 「食べ過ぎくらいで人は死にませんーだ」 「…焼けてない肉は中るんだぞ」 文句を言いながらも、弓月はせっせと肉を口に運んでいく。 そして根性で何とか全部食べ切ると、急いで皿を伏せて次が乗せられないようにガードした。 ちっと両脇から舌打ちが起きたが、知らない振りをする。 美味かったが、思った通り、既に胃が重い。 「で、銃は?」 「こっちにあるよ」 つっと箱が滑ってきて、弓月はそれを受け止めて開けた。 艶々と、銀色の銃が光っている。 リボルバー式の銃で、弓月は構えてみたり重さを感じてみたり床にぶつけてみたりと色々試していたが、やがて納得がいったのか、セイカに頭を下げた。 「有り難う、頼んでいた以上の出来だ。申し分ない」 「どういたしまして。こちらこそ、久し振りにいい仕事させてもらったよ」 「ところで、幾らになります?」 「これくらい」 セイカは細長い紙をセイラに渡す。 その額に目を通したセイラはにこっと笑った。 「意外と安いのね」 弓月も覗き込むが、次の瞬間さっと目を逸らした。 その隙にセイラが抜かりなく弓月の皿に肉と野菜を追加した。 「おい、こらっ」 「まあまあ、明日頑張りなさいよ」 「当たり前だ」 結局鍋に戻す事もせず、弓月はまた重い胃に肉を詰めた。 「そうだ弓月、これはおまけだよ」 セイカの言葉と共にポンと黒い物が落ちてきた。 拾い上げてみると、それは黒い革のグローブだった。 「東洋のマジナイをたっぷり籠めておいたからね、必勝祈願の!」 |